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気ままに絵のみち 熊谷守一 (別冊 太陽) [5:その他]

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ソロ・ギターの曲に対して、「いい曲だなぁ~」と自分が判断する基準のひとつに、「聴いていると音楽を忘れてふっと絵が浮かんでくるもの」というのがあります。

「じゃあ、どういう画家が好みなの?」と問われたら、まず挙げたいのが熊谷守一。

飄々(ひょうひょう)として枯れた構図に見えますが、じっと眺めているとなんともいえない力強さを感じる不思議な画風が魅力です。

 

わたしが熊谷守一の絵を知ったのは5年前のこと。
たまたま立ち寄った水戸にある茨城県近代美術館の展覧会でした。

その日は倉敷にある大原美術館の所蔵品が展示されていて、そこに展示されていた「陽の死んだ日」という作品に出会ったことがきっかけです。

それまで熊谷守一という画家のことはまったく知らなかったのですが、この絵をみた瞬間に「!」となってしばらく立ち尽くしてしまいました。

・熊谷守一「陽の死んだ日」(1928) [大原美術館所蔵]
 http://www.ohara.or.jp/200707/jp/1_web/2/exh/006.html


 ・   ・   ・

  


熊谷守一は音楽好きで、音楽家の信時潔と交流があり、彼の影響で音の研究にのめりこんだ時期があったということです。

「気ままに絵のみち 熊谷守一」によれば、『絵を描かずに、音の振動数の計算に熱中したのは、長男が生まれる前後のことだ。信時に借りたドイツ人学者の本から興味を持ち、無数にある音の組み合わせの振動数の計算ばかりにとうとう一年ほども費やした。』とあります。

年表によれば、この時期は関東大震災のあった1923年前後に当たります。日本では1925年にラジオ放送が始まっていますので、まだ真空管を使ったオーディオ機器が普及していない時代。

彼はいったいどういう本を使って、どういう計算をしていたのか、興味のあるところです。

ドイツ人学者で音響に関する研究を行なった人物といえば、音色が楽音に含まれる倍音の種類、数、強さによって決定されることを明らかにしたヘルムホルツが思い浮かぶところですが・・・。

(2009/6/2記)

 


 日本経済新聞の『私の履歴書』に熊谷守一が掲載した文章をまとめた「へたも絵のうち」を読んでみたところ、彼が絵を書かずに没頭していた音の研究に関して詳しい記述がありました。

 

 ・・・今でも妻がよく話すのは、音の振動数の計算のことです。ドイツのヘルムホルツという学者がこの道の権威で本を書いているのですが、それを信時潔に貸してもらって読んだら、なかなか複雑でむずかしい。音というものは高い低いによって振動数が違う、高い音は波の数が多く、低いのは少ない。二つ以上の音を同時に出すと、その波がいろいろ入り組んでくる。その入り組み方によって、きれいな音やきたない音ができる---とまあ、そういう話なのです。

 面白くなって、その音の組み合わせの、それぞれの振動数をいろいろと計算しました。音の高低は何段階にも分かれていて、その組み合わせも無数といっていいほどある。それを順に計算していきました。しかしとりかかると果てしがない。夜静かになってから夜ふかしして計算し続け、毎晩続けても、まだ次から次へと組み合わせはあります。とうとう一年ほど、ほかのことはあまりやらずに、この計算にせいを出してしまいました。このときは妻に、「そんなむずかしい計算ばかりして、生活の計算はいっこうにしない」といわれました。      (「へたも絵のうち」熊谷守一より)

(2009/12/12記)

 

 


 

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 こちらの自伝もおすすめです。

 

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